叩きたくてたまらない #1


それから半年ほどの間は、
月に一度のペースで開催される
D氏のワークショップに欠かさず通った。
もちろんD氏から買い受けた
ジェンべを持参して。

持参するようになってわかったが、
ジェンべを持ち運ぶのには
なかなかの苦労がともなう。

大きくてそこそこ重い。
リュックのように背負ってみるのだが、
重心が上にあるジェンべの構造上、
背中で思うように安定してくれない。
肩にかけたり抱えてみたりしたが、
どれも持ちやすさはいまひとつ。

それでもこの頃のわたしは
ワークショップに通うのが
何よりも楽しかった。

毎月通っているうちに、
顔見知りもできた。

Dのワークショップが
毎週あったらいいのに、
もしあったら絶対通うのに。
と、いつも思ってた。

仕事が早く終わった日や、
予定のない休日には、
四畳半の部屋で
いそいそとケースからジェンべを出す。

そしてジェンべの下から
スエットを詰め込み、
折りたたんだバスタオルを打面にかける。
椅子の足元に座布団を敷き、
その上でジェンべを構える。

叩くとパタパタと
全くさえない音がする。
それでも一応、ジャンベを叩いている。
家にジャンベがあるって嬉しい。
D氏のワークショップで教わったパートを
何度も叩いた。

しかしそれに喜んでいたのは
ほんの短い間だった。
こうやって叩いても全然いい音が出ない。
わたしはD氏が叩いた時に出るような
あの音が出したいのに。

そしてひとりで叩いても
全く気持ちが良くないことにも気づいた。
あの一体感や開放感は
自宅でひとりパタパタ手を動かしても
全く得られなかった。

そもそもわたしの叩き方は
これで合ってるのかな?
ヘボい音しか出ないのは
叩き方が間違っているのでは?

Dのワークショップは月に一度だけ。
次のワークショップまでの間が、
とてつもなく長く不安に感じられた。

はやく上達したい。
もっと気持ち良く叩きたい。
そんな欲が生まれて初めていた。

ジャンベが習えるとこって
どこか他にもないのかな?

ジェンべの内側は
音の抜けをよくするため空洞になっています。
ここを塞ぐと多少の消音効果があります、
多少のね(笑)

叩きたくてたまらない #2へつづく)

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