ジェンべは突然やって来た #3


D氏のワークショップが終わって
1週間ほどたった日曜の午後のことだった。

昨夜はドラムンベースのパーティで
はしゃいでいたため、
お昼を回ったついさっき目覚めた。

雑居ビルにはさまれた四畳半の1K、
寝起きしている部屋には窓がなく、
キッチンについている小さな窓も北向き。
日差しの影響を全く受けないその部屋は、
オール明けの日に眠るのに
ちょうど良かった。

のろのろと起き出して、
アパートの小さな部屋を
片付たり掃除したりしていると
ふいに玄関のチャイムが鳴った。

誰か来る予定あったっけ?
外を確かめようと扉の覗き穴に近づくと、
「宅配便でーす。」と、
向こう側から声がした。
実家かな?
でも荷物を送る予定なんて聞いてない。

「はい」と返事をして、
チェーンをつけたまま扉をあけると、
そこに宅配便のお兄さんが
大きめな荷物を持って立っていた。

「重いですよ。」
手渡された荷物をいったん下に置き、
よくわからないまま受け取りのサインをした。
発送者の欄にはDの名前があった。
それを見てわたしはハッとした。

もしかして、これジャンベかも?
なんで?
いきなりなんで??

バタンと扉が閉まり、
お兄さんが階段を駆け降りる足音が
だんだん遠のいていく。
小さな玄関は呆然とするわたしと
突然現れた荷物とが、
まるで世界から取り残されたように
立ち尽くしていた。

予期せぬ突然のできごとで、
ドキドキ心臓が鼓動する。
頭の中はクエスチョンマークだらけになり
次の行動にうまく移れない。

透明なビニールでカバーされた中に
エスニックな雰囲気の柄の布地が
ちらりと見えた。

心臓の鼓動がさらに高まる。

落ち着け落ち着け。
とりあえず、うん、
とりあえず開けてみよう。

中から出てきたのは、
一台のジャンベと、請求書だった。

これがその実物。D氏のサインがちらりと見えてます(笑)
初めて出会った時の印象は散々だったけど、
その後長い間わたしのよき相棒でいてくれました。

そう、確かにわたしはDに
ジャンベが欲しい、と言った。
それがいきなり家に送られてくるって、
なんか展開が速すぎない?

あと、買うとはまだ言ってない。
請求書には6万円という金額が記されていて、
軽くめまいがした。

そしてもし買うにしても、選べないの?
形とか大きさとか色とか。
特にこのケースの柄、
全く趣味じゃない!

わたしは四畳半の部屋で、
突然現れたジェンべと対峙していた。

ジェンべは突然やって来た#4へつづく

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