ジェンべと出会った頃のこと #2


大学を卒業して、
デザイン会社で働いていたあの頃、
自由にできる時間とお金を
気の合う仲間と一緒に
夜遊びに費やしていた、
90年代の終わり頃。

その日は
その当時盛り上がってた
レイヴ系のイベントだった。
雑居ビルが立ち並ぶ一角の
小さなビルに入る。
エントランスを抜けると、
小さくて細長いフロアが
地上3階地下1階に分かれている。

フロアごとに雰囲気が違っていて、
わたしのお目当ては
最上階のドラムンベースフロア。
そこへ行くため、
梯みたいに急な傾斜の細い階段を、
気をつけながら上がっていくと
ドコドコドコドコと、
何かを一斉に叩いてる音が聞こえてきた。

その音のするフロアは2階。
ちょっと興味がわいたのでのぞいてみると、
竹やロープでデコレーションされた
抽象的なオブジェが、
薄暗いブラックライトの照明に
ぽわんと浮かび上がる部屋の中で、
10人ほどのの男女が
輪になって太鼓を叩いていた。

大きさは大小あったけど、
みんな同じようなフォルムの太鼓を
素手でポコポコ叩いていた。
丸い打面を足で挟むようにして座り、
ひたすら叩く人たち。
打面がブラックライトに照らされて、
青白く浮かび上がる。

わたしはその様子を
何の気なしに見ていた。

それぞれ1人づつが叩いて出している音が
重なって厚みを増していくと、
それはひとつの渦になって
うねりながら広がっていく。

気づいたら、
その渦に持って行かれてた。
渦はうねるようにぐるぐる回って
わたしの身体にまとわりつく。
そして心地よいリズムで揺れながら
何かに導かれるように
上へ上へと登って行く。
足元がふっと軽くなるような気がして、
鳥肌がゾワっと立った。
何だこの感覚は?
おもしろーい!

音が止んだ時、
近くで叩いていた女の子に
「それ、なんていう楽器?」
って思わず声をかけた。

「これ?ジャンベよ。」


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